映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』感想レビュー【ダークファンタジー×サスペンス】

『ハリー・ポッター』シリーズの完結から5年。
2016年、J・K・ローリングが脚本を務める新作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が公開され、日本でも70億円を超える大ヒットとなった。

ハリー達がホグワーツで使っていた教科書の著者であるニュート・スキャマンダーが主人公の本シリーズは、前シリーズとは一風変わった作風で描かれている。
ホグワーツを卒業後のニュートがニューヨークの街で魔法動物たちを逃がしてしまったことから、新たな仲間との出会い、そしてグリンデルバルドとの戦いが始まった。

2年おきに全5作で構成される本シリーズは、予定通り2018年、待望の2作目が公開された。
舞台はパリ。お馴染みの4人、逃亡したクリーデンス、若きダンブルドア、そしてグリンデルバルド。
その他にも新たなキャラクターが登場し、物語が大きく動き出す。


※以下ネタバレを含む感想レビューになります。




物語の展開

一作目とはガラッと違う雰囲気になった今作。
自身の出生を探るクリーデンス、それを追うグリンデルバルド、グリンデルバルドの野望を阻止すべくダンブルドアに頼まれ追うニュート。
パリを舞台に物語が繰り広げられる。
その裏ではジェイコブを愛するあまり誤ったことをし別れることとなるクイニー。
リタとの誤報を信じ破局したと勘違いしたティナとの恋愛も描かれる。

本格始動するグリンデルバルド、若きダンブルドアのほか、ニュートの兄であるテセウスやその婚約者であるリタ・レストレンジ。
クリーデンスと共に過ごすナギニ、そしてクリーデンスの出生に関わるユスフなど新キャラクターも多く登場する。

クリーデンスという存在

レストレンジ家に生まれ父に愛されなかったリタ、宿命に駆られたユスフ。
そして明かされるクリーデンスの悲しい生い立ち。
今作が難解とされる要素の一つがこのサスペンス部分だが、自分は予想していなかった裏切りの連続に引き込まれた。
目的を失ったユスフの今後も気になるが、リタの決断に驚かされた。
ニュートにとって、今はテセウスにとっても大事な存在である彼女が今作で命を落とすとは思ってもみなかった。
そしてクリーデンスはグリンデルバルドの手を取り、自らの意思で闇へ向かう。
ラスト明かされる衝撃の名前には度肝を抜かれた。
その真偽がどうであれ、今作でクリーデンスがシリーズの核となることが決定した。

グリンデルバルドを演じるジョニー・デップ

前作のラスト、コリン・ファレル演じる最高にスマートでかっこいいグレイブスの中身が、ティム・バートン感バリバリの太ったジョニー・デップでガッカリしたのを覚えている。
しかし今作を観るとグリンデルバルドはジョニー・デップで良かったと思う。
半年の幽閉により痩せこけルックスもシャープになり、普通ではない雰囲気と気味悪さを存分に感じられた。
ダンブルドアにジュード・ロウも同じように、重要なキャストに俳優個人のイメージが強いビッグネームを起用するのは反対だったが、終わってみればそれが見応えを生み出していたと思う。

引き込まれる圧巻の映像

冒頭グリンデルバルドの逃走劇は素晴らしかった。
「あそこがピーク」なんて皮肉な声もあるが、タイトルが出るまでの数分間は一気に引き込まれた。
序盤ニュートの家では多くの魔法動物が登場し、目玉となるズーウーも最高にスクリーン映えする。
ケルピーのシーンもだったが今作は前作以上にフレームブレイクが多く、IMAX3Dでは魔法動物たちの迫力を存分に楽しめた。
ダンブルドア、グリンデルバルドという最高クラスの魔法使いの登場により魔法のシーンは増えた。
ダンブルドアは霧を出したぐらいだが、一瞬で街を覆う霧を出すあのワンシーンでも魔力の強さが感じられる。

グリンデルバルドも2作目なだけあって本格的な戦闘はなかったが、集会で出したバケモノじみた魔法は圧巻だった。
そしてそれを止めるべく共闘するニュート達、あのシーンのおかげで個人的には満足したし、消化不良感はなかった。

ニュートの存在感

何よりも言われているのがこの部分だと思う。
正しくはニュート"達"だろうが。

今作のタイトルは「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」で、原題では副題の「The Crimes of Grindelwald」がメインタイトルのようなロゴデザインになっている以上ある程度は予想できた。
メインとなるグリンデルバルドはもちろん、ニュートとリタの関係やテセウス、ダンブルドアとの絡み、多くの新キャラクター、そしてクリーデンスを描写する上でこうなったのだろう。

それでも序盤でニュートの家の紹介で魔法動物を存分に見せ、そこからはニフラーやズーウーといった主要キャラクターが目立っていたし、オマケ感と言われればそうかもしれないがうまく描けてたと思う。

面倒くさすぎるゴールドスタイン姉妹

ただ何よりも問題なのがゴールドスタイン姉妹の面倒くささ…。
前作のティナは家計を養うため仕事に没頭しすぎた結果ニュートを危険にさらしたが、今作での2人が離れる理由はあまりに軽い。

ゴシップを鵜呑みにし、本人に確認することもせず破局したと思い込み仕事に没頭し、あげくすぐに新しい彼氏まで作る。
和解シーンを観るとお似合いとは思うし2人とも可愛らしいとは思うが、もっとマシな描き方はいくらでもできたように思う。
そして今作で衝撃のラストを迎えるクイニー。
ジェイコブという素敵な男性を愛するあまり誤った行動をし、それを責められ彼の元を去るという面倒くささ。
彼女なりの苦悩はいろいろあるとはいえ、これではあまりに安っぽく映る。
そしてマグルと自由に恋愛できるというグリンデルバルの言葉に心酔し、結果闇の道へと進んでしまう。
成熟した大人の女性ではなく、若さゆえの、という描き方をしたいのは分かるが、もはや観客から嫌われるために描いたのかと疑ってしまうレベル。

愛するクイニーを失ったジェイコブは、マグルな以上物語が本格化するほど疎外感が出てしまうのは分かり切っていたから仕方ない。
ただ残り3作を描く上で必要な部分だったんだろうと納得した。
前作はシリアスな中でも4人とも好きになれる描き方をしていたが、今作においてその部分の描写のせいでマイナス評を生み出してしまったように思う。


次作への期待

今作の良し悪しはさておき、テセウスの活躍がなかったのは個人的に嬉しかった。
"英雄"と称される彼が今後戦いが本格化していく中でどれほどの活躍をしてくれるのかは大きな楽しみになっている。

ただリタを失ったことで芽生える復讐心が悪い結果を招かないかが心配。
リタの最期の「愛してる」はニュートに言っていたようにも見えたが、テセウスがどう感じたのかも気になる。
ダンブルドアは血の誓いを破って本格的な戦闘に参加してほしいという期待感もある。
自ら闇の魔法使い達を攻めることはしなくとも、魔法をコントロールできるようになるであろうクリーデンスが襲いかかるだろうし、それにどう対応するのかは見どころ。
魔法動物達がさらにダークになっていくシリーズでどう描かれるのかも興味深い。

総括

評判は良くないし確かにそれに頷ける部分もあるけど、全5作中の2作目という性質上説明する事が多く、なおかつ消化不良感が出るのは仕方ないかなと。
個人的には本編中につまらないとは思わなかったし、クイニーもティナも面倒くさいなとは思いながらも、魔法動物もサスペンスもそれぞれ純粋に楽しめた。

大きな驚きもありながら光と闇が明確になった今作、果たして次でどう進展していくのか。
3作目も引き続き楽しみにしてる。

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