公開当初から圧倒的な高評価を得ていた本作は賞レースを総なめにした。
「スパイダーマン」はこれまで3つのシリーズで6作品が存在するが、本作は全く新しい「スパイダーマン」の物語だ。
予備知識は不要だが、スパイダーマンが好きであればあるほど傑作と化するのは間違いない。
※感想パートにはネタバレが含まれます。
物語
大いなる力には大いなる責任が伴う
戦いの最中でも軽口を叩くその明るいキャラクターとは対照的に、スパイダーマンの物語はあまりにも辛く暗い。
自らの行いから叔父を失い、その力の責任を果たすべく人助けをする。
しかし宿敵との戦いにより、最愛の人までも目の前で失ってしまう。
それでも彼は親愛なる隣人であり続けなければならない。
「スパイダーマン」でいるという運命を課せられたピーターは、普通の暮らしを送る事さえ叶わない。
そんなマスクの裏に隠された悲しみを共有できるのは、同じ「スパイダーマン」しかいない。
スパイダーマンの宿命
10年間ニューヨークのクイーンズを拠点に人々と世界を救ってきたピーター・パーカーは、キングピンによりその命を絶たれてしまう。
彼の最期の目撃者となったのは、昨日までは普通の高校生だったマイルス・モラレス。
人々と同じくスパイダーマンを愛するマイルスは知っている。
この課せられた重すぎる運命には、親しい者の死が伴う事を。
マイルスはそれを阻止し、そして世界を救うべくマルチバース(多元宇宙)から来たスパイダーマン達と協力する。
マイルス・モラレスの物語
学校生活に悩み、父親との関係もうまくいっていないマイルス。
ピーターとは違う生い立ち、そして運命を辿るマイルスを導くスパイダーマン達。
20年間クイーンズを守り抜きながらも、愛するMJとは離婚し、身体もだらしなく中年太りしたピーター・B・パーカー。
ピーター・パーカーでなくグウェン・ステイシーがスパイダーウーマンとして活動する世界から来たスパイダーグウェン。
マイルスの物語が、ダイナミックかつアーティスティックなCGアニメーションによって迫力の映像で描かれる。
感想
圧巻のCGアニメーション
本作の大きな個性となるのがCGアニメーションのクオリティ。
コミックの世界がそのまま3Dになって動いてるような映像は本当に斬新で面白かった。
世界観の異なるスパイダーマンは彼ら本来のタッチで描かれている。
今までのアニメでは観た事がないようなこの素晴らしい映像を生み出した制作陣を本当に尊敬する。
間違いなくIMAX3Dで観るべきアニメ映画になっている。
ピーター・B・パーカー
とてもスーパーヒーローとは呼べない体型の彼だが、実戦を見ると当然ながらその実力は確かだ。
研究所から脱出する際、マイルスの様子を伺いながらも、さりげなく複数の敵を一瞬で一網打尽にするシーンがかっこいい。
そしてスイングを教えるシーンでは心から嬉しそうでこっちまで幸せになる。
スパイダーマンとして活動する中で弟子をとるなんて想像もしていなかったろうし、スパイダーマンの後輩の成長を目の前で感じられたのは本当に嬉しかったと思う。
研究所の後マイルスとグウェンの会話を聞きながら笑うピーターのシーンは今作で一番好きかもしれない。
グウェン・ステイシー
本作において個人的に彼女の存在が際立っていた。
スパイダーグウェンはコミックの1巻しか読んだことないが、今作ではその人気を裏切らない本当に魅力的なキャラクターになっている。
ルックスは声優のヘイリー・スタインフェルドっぽさもあり、彼女の声も最高だった。
賢くクールで強く、そして可愛さも持ち合わせているまさに最強のスパイダーウーマンだ。
研究所の後、バスでのマイルスとの会話がすごく好きだ。
最後にはしっかり友達として受け入れたのも良い。
3人のスパイダーマン
ペニーは日本のアニメそのままといった雰囲気で可愛らしい。
スパイダーハムもコミックからそのまま出てきたようなルックスで、作品にポップさをもたらしている。
その中でも個人的にはノワールが大好きだった。
ニコラス・ケイジの渋い声が完璧にマッチしていて、固すぎないクールさも最高だった。
マイルス・モラレス
真のスパイダーマンになるには親しい人の死が不可欠。
その悲しみを乗り越え、強い決意を持って運命と向き合う。
愛する叔父の裏切りと突然の別れ。
順調とはいえない父との距離感は、これをきっかけにお互いが寄り添うことになる。
父は叔父の反動もあり、息子のマイルスには良き人間になってくれるよう願い、その思いを本人の意思に関係なく押し付けてしまっていた。
マイルスと友達のような関係を築いていた弟の死で、彼は息子との向き合い方を改めることができた。
思春期真っ只中のマイルスは面と向かって父に「愛してる」とは言えないかもしれないが、マスクを通して伝えるシーンは最高に可愛らしく感動的だ。
スタン・リー&スティーブ・ディッコ
この2人により生み出された、今やスーパーヒーローのアイコン的存在であるスパイダーマン。
マーベル作品お馴染みのスタン・リーのカメオ出演シーンだが、これまでとは違い今作では泣かされてしまう。
本編の後、昨年亡くなったこの2人に向けられた制作陣の愛あるメッセージにももう一度泣かされた。
2002年サム・ライミ監督によって映像化されたスパイダーマンに世界中が熱狂した。
あの時自分たちが味わった感動を今の子供達に体験してほしい。
あの時よりメッセージ性が強く、より感化されるはずだ。
誰もがマスクを被れる、ヒーローになれるんだと夢を持ってほしい。
#スパイダーマンは1人じゃない
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