映画『グリーンブック』ネタバレなし感想レビュー【アカデミー賞作品賞も納得の最高のロードムービー】

第91回アカデミー賞で、作品賞・助演男優賞・脚本賞の3部門を受賞した本作。
例年作品賞は大衆向けではなく玄人好みの作品が多い中、本作は誰もが楽しめる素晴らしい作品だった。



ドクとトニーの出会い

1962年、黒人ピアニストのドク(ドクター・シャーリー)は、コンサートツアーで人種差別が根強く残るアメリカ南部を訪れる。
ナイトクラブで用心棒をしていたトニー(トニー・バレロンガ)もまた、黒人を忌み嫌う白人だったが、給料に惹かれツアードライバーの仕事を受ける。
トニーはこの仕事に乗り気ではなく、黒人であるドクを良く思っていなかった。
しかし最初のコンサートでドクの演奏に圧倒されると、それから徐々に2人の距離は近づいていく。

南部での差別

南部で味わう酷い差別の数々。
日本人が教科書で知る出来事を、ドクをその身を持って感じる。

ドクは音楽家として成功し、社会的地位も得ている上流階級の人間だ。
身なりの良いスーツを着てその立ち振る舞いにも気品があるが、南部の彼らにとっては黒人であることに変わりはない。
そんな場所に自らの意思で足を運び、差別に屈することなく立ち向かうドクを、マハーシャラ・アリが完璧に演じている。


ヴィゴ・モーテンセン

アカデミー賞作品賞らしい社会問題を描いた作品だが、決して重苦しくなりすぎていない。
それは本作の主人公で、オスカーにもノミネートされたヴィゴ・モーテンセン演じるトニーのキャラクターによるものだ。

ヴィゴと言えばロードオブザリングのアラゴルン。
アラゴルンは幼少期の自分にとって本当にかっこいい存在で永遠のアイドルだ。
実在したトニー・バレロンガを演じるにあたり約20キロも増量したその見た目は、言われるまでとてもあのアラゴルンと同じ俳優とは気づかなかった。
本人は増量した事を強調したくないと謙遜しているが本当に見事な太りっぷりだった。

トニーはガサツで素行も悪いが、よく笑いよく食べる豪快な人物だ
最初はドクをよく思っていなかったが、行動を共にし、彼の才能やその強い意志に惹かれ打ち解け合う。

ふたりの関係

当時の黒人が当たり前に味わった差別の数々。
そのあまりの理不尽さに涙が出る。
それでも屈する事なく、自ら行動を起こし立ち向かうドクと、そんな彼の頼もしい相棒となるトニー。

またトニーとってドクは、理由もなく黒人を見下していた自分を見つめ直す機会を与えてくれた人物であり、妻ドロレスへの手紙の先生でもあった。
2人の会話に何度も笑わされ、そしてその思いに泣かされる。
旅の最後、2人は大きな決断を下す。
その選択を尊敬するし、その結果訪れる素敵な時間がとても印象的だ。

総括

ラストではもう終わってしまうのかと思ってしまうような、笑って泣ける最高のロードムービーだった。
旅を終えた後正反対の場所に帰る2人だが、その時ドクは勇気を出してトニーに言われた言葉を実行する場面は本当に素敵だ。

日本人には馴染みの薄い人種差別という問題をよく知る上で、万人にオススメできる秀作。

特にラストのドロレスの一言と、フライドチキンのくだりが最高だ。
映画を観た後強烈にフライドチキンを食べたくなった。

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